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グースカと僕

僕は学校が嫌いだ。
周りに居るのは、仲良くする価値も無いような、クズみたいな連中ばかり。
低脳で野蛮なあいつ等を見てると、ストレスがたまってむしろ勉強に悪影響が出る。
かといって、自分の意思で高校へ進学した手前、僕はただ現状に耐えるしかないのだ。
勉強なんて、家でもできるのに。

悪影響といえば、そう。
僕のすぐ後ろの席にいる男は本当に迷惑だ。
こいつは、授業中だろうが、休憩時間中だろうが。
構わずグースカいびきをたてて寝る。
僕が渋々、学校で勉強をしようにも。
こいつが僕のクラスに居て、そして僕のすぐ後ろの席にいる限り。
まともに勉強なんてできやしないだろう。

僕は、あまり頭が良い方ではない。
仮に僕が、天才と呼ばれる類の人間だったとしたら。
こんなにも勉強にこだわったりはしない。
至って平均的な頭脳しか持っていない、そう僕は凡人なのだ。
だから人並みに、いや、それ以上に努力をしなくては、良い大学にはいけないのだ。
だから、勉強は大事なのだ。

……あぁ、ほら。
いわんこっちゃない。
今日もまた、すぐ後ろでグースカいびきをこいて寝てるよ。
駄目だ。
もう我慢できない。

っていうか、なんで先生達はこいつの事を注意しないんだろう。
そこからして腹立たしい。
こんな糞みたいな学校だと知っていたら、僕はもっと違う学校に通ったのに。

あーもう、他人になど頼っていられるか。
今日こそは後ろの奴に面と向かって「寝るな」と言ってやる。

僕は、大きく息を吸い込んで、勇気を出して振り向いた――




top04d.jpg

――瞬間。
僕の怒りは、どこかに飛んでいってしまった。
同時に、言いようの無い感情が僕の心を支配して。
声を発することも、捻った体を元に戻すこともできずにただ。
目の前の男に目を奪われ続けていた。

「コラ、授業中に堂々と後ろを振り返って何やってんだお前は」

ポカンと、丸めた教科書で頭を叩かれる。
その衝撃(のお陰)で僕の動かなかった体は束縛から解き放たれた。

はははは。とクラスが笑う。
僕はポツリとすみませんと呟き、黒板に向き直った。
いつもなら「なんで僕ばっかり……寝てるコイツは怒らないのかよ」と不貞腐れるところなのだけれど。



それからというもの。
学校居る時はおろか、家に帰っても。
大好きな水族館でペンギンを眺めていても。
夜のコンビニで最新の漫画雑誌を立ち読みをしていても。
いつだって、僕の頭の片隅には、あの男が居座って、グースカといびきを立てている。
それまで必死に取り組んでいた勉強も、途端にどうでも良くなり。
あの男――グースカへの好奇心で僕はいっぱいだった。

どんな音楽を聞くんだろう。
どんな本を読むんだろう。
何人家族?
家はどの辺だろうか。
自転車通学かな。

グースカへの興味は尽きることが無かった。

ああ。
グースカと友達になれたいいのに。

あんなに億劫だった学校生活が。
今となっては、不思議と楽しみになっている。
周りの馬鹿共は、今も受け入れらないけど。
でもグースカが居るなら僕は、こんなゴミみたいな場所でも。
生きて居たいって思った。


そんなある日。
事件が起こった。

「なぁ、悪いんだけど、消しゴム貸してくんない?」

あのグースカが突然、僕に話しかけてきたんだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

ということで、新年あけましておめでとうございます!
今年もどうぞ宜しくお願いいたします!!
(・`ω´・)

| イラスト | 05:30 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

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