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その距離、20年

静まり返った真夜中の田園。
地図に載らない村の、誰も知らない儀式の代償。

「よ。20年ぶり」
「……なんか、すっかりおっさんになったね」
「お前は全然……変わってねーのな」

20年の距離を、すこしずつ、すこしずつ埋める会話。
ぎこちなく過ぎる時間。

「僕以外の人と、ちゅーした?」
「……しねーよ」
「しても良かったのに」
「……したくねー」
「……」
「………………」

「手、握ってもいいか?」
「……はは。握れないと思うよ」

そこにあるはずの体温に触れることはかなわず。
男の手は虚しく空を切った。

時間に縛られた少年は、肩をすくめる。

「これじゃあ、まるでオバケだよね」
「…………」

迫る刻限に急かされるように、濃黒色の雲が月を覆う。
淡い光を放つ少年の体は、徐々に密度を失っていく。

「!!」
「……時間みたい」
「ちょっと……待ってくれよ。まだ、話したいこと、いっぱいあるんだ」

詰め寄る男と距離を置くように、少年は一歩後ずさる。

「……もう、僕のこと、忘れてくれていいよ」
「……は?」
「君まで、縛れちゃダメだよ、この村の呪いに。新しく、好きな人見つけてさ、幸せに生き―――」

宵闇に横たわる静寂を切り裂くように、遠くでキジが鳴いた。

「俺は呪いになんて縛られてねぇ!!俺がお前を好きな気持ちを!お前が否定すんなよ!!俺はお前が好きだよ!!今も!これからも!20年後も!40年後も!!」
「でもそれじゃ……!君はずっと一人ぼっちだよ……」
「お前がいるだろ!!」
「いないよ……」
「いる!!」
「触れないのに?」
「触れなくても!!」
「ちゅーもできないよ?」
「お前以外の奴とするくらいなら、いい!!」
「だけど……」
「お前は……俺が嫌いか?」

ぽつりと落とされた、男の言葉に、少年は肩を震わせた。

「嫌い……な訳ないでしょ」

少年の体を、男の大きな腕が包み込む。
触れることはかなわないと知りながら。

「それだけで……充分だ」
「……うん」
「20年、待ってるから」
「うん」
「俺……きっともっと、オッサンになってっけど……笑うなよ」
「うん」

温度のない抱擁。
震える声。

「今度はちゃんと話せるように…話したいことメモっとくから」
「……うん」
「それから……それから」

「……もう、いかなくちゃ」
「…………そっか」
「最後に一個……良い?」
「……ん?」
「消えたく……ないよ」

少年が堪えきれずこぼした涙に。
堪えきれず、男は泣いた。

top06a.jpg

少年が消えたあとも、男のむせびは止むことはなく。

それは。
地図に載らない村の、誰も知らない儀式の代償。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

という事で、2月中に描いておいたイラストをこのタイミングで投下。
設定としては、15歳で儀式が執り行われていて。
つまり、男が35歳で、少年が15歳くらいの設定。
儀式の年齢が年齢なので、お互い童貞。
35歳で童貞って萌える。

描き始めたきっかけは、単純にこの衣装が描きたかっただけ。
……自分の場合そんなもんです、初動の動機なんてもんは。

| イラスト | 17:29 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

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