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たいせつなこと

生きていると、辛い事や苦しい事ばかりが目に付いて。
顔では笑ってても、内心死人のように横たわってる自分がいる。
力なく開いた目蓋から覗く、真っ黒な瞳はただ虚を見つめて。

「生きるってなんですか?」

そんな事をうわ言みたいに呟く自分がいる。


アシュリー・ヘギという少女。
彼女の事を知ったのは数年前。
アシュリーに密着したドキュメント番組。

今日、彼女の最新のドキュメント番組が放送されて。
彼女は少なからず僕に生きる事の意味を見せてくれた。
はっきりとはまだ、それが何かは分からないけど。
だけど全てに目を背けていたあの頃より僕は確かに生きている。

通常の10倍の速度で歳をとる奇病「プロジェリア」。
アシュリーはその奇病を患いながら産声をあげた。
言葉が悪いけど、彼女の容姿はとても異質なもので。
それを含めて、彼女が背負った運命はあまりにも残酷で。
やりきれなくて涙が零れた。

アシュリーに光は見えただろうか。
この世界はせめて優しい世界だっただろうか。

幼稚園児ほどの小さな身体にはあまりにも不釣合いな荷物。
どれ程の痛みが彼女を蝕んだんだろう。

プロジェリア患者の平均寿命を越え。
プロジェリア患者史上最高齢でその生を終えた少女。
17年という年月で彼女は何を思い、何に絶望し、何を夢見たんだろう。

アシュリーと言葉を交わしてみたいと思った。
それはもうかなわない事だけど。
仮に話せたとしても、言葉なんて通じやしないだろうけど。
それでも彼女が背負ったものの重さを。
ほんの少しでも感じられるのなら。
アシュリーとの接触にはきっと、計り知れないほどの意味や価値があるんだろうと思った。

「生きてるだけで幸せ」

でもまだそんな風には思えない自分。

それでもアシュリーの17年を思えば。
自分の生に誇りを持ちたいって思うし、持てる様に頑張ろうって思う。

「生きるってなんですか?」

アシュリーなら、何て答えたのかな?

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