第三話
「ね~パパー!!肩車して―!!」
「んー?ははは。お前はほんっと、肩車好きだなー!よいしょっっと!!」
「あははははは!!たかーいたかーい!お父さんすごーい!!」
高台の公園を尻目に、俺は小さく、眉根を寄せた。
昼間の公園は、好きじゃない。
そこには、俺が持ち得なかった、キラキラとした幸せが、満ちているから。
「お前、捨てられてたんだぜ?しらねーの?コインロッカーベイビーってやつ(笑)」
俺は大学まで、児童養護施設で育ち、中学の時、そこに居た先輩に聞かされた。
あと少し、発見が遅れていたら、俺は0歳にして、死んでいたそうだ。
「……………」
両親の代わりに、温和そうな先生達が、俺の親代わりだった。
本当の父と、母の顔は、分からない。
今になって。
無性に、親の愛を、感じてみたくなる。
肩車って、どんなだろう。
お父さんの背中って、どんなだろう。
お母さんの料理って、どんなだろう。
家族って、どんなだろう。
施設の奴らとは、今もたまに連絡を取る。
けど、やっぱり根本的に、違う部分があって。
自分が同性愛者だという事実が、どうしても、壁を1枚作ってしまうんだ。
施設の中で、付き合ったり、肉体関係を持つことはざらだった。
俺も1回、高校時代。同い年の女に求められたことがあったが。
どうしても、そういう気持ちには、なれなかった。
ただただ。
自分が他人とは違うのだと、思い知らされた。
「……なーんももってねー奴、いねーかな」
もしそんな奴がいれば。
是非、友達になりたい。
同じ痛みを、夜が明けるまで、語り合いたい。
自分のこと。
過去のこと。
未来のこと。
独りじゃないって、どんなだろう。
それがどうしても、知りたい。
「………なーんつって、さ」
自嘲気味に鼻を鳴らして、肩をすくませる。
もう、流石に、諦めてるんだ。
だから、独りで生きていこうって。
独りで生きていくんだって、決めた。
親にも捨てられるような、くだらない命。
一体誰が、必要としてくれるだろう。
――なのに。
ここ数日。
頭の片隅に、メガネの泣き顔が、いつも、ある。
昔の俺を、見ているようで。
こんな俺でも、メガネの力になれるんじゃないかって。
そんな風に考えてる自分が、確かに居る。
ポケットの中には、俺の携帯番号を書いたメモが入ってる。
いざという時。アイツに、誰かの力が必要になった時。
俺なら、助けてやれる気がしたから。
メガネは今、学校だろうか。
また、いじめられてやしないだろうか。
そういえば、俺はメガネの名前も、年齢も、どこの学校なのかも、しらない。
「次会ったら…聞いてみっか」
ふと空を見上げると。
空にぽつんと、白い雲が浮かんでいた。
その形がなんだか、メガネみたいに見えて、可笑しかった。
俺はついさっき仮の歯を入れてもらったところを、舌でグリグリしながら。
「なんか、違和感あんなぁ」
呟いた。
「んー?ははは。お前はほんっと、肩車好きだなー!よいしょっっと!!」
「あははははは!!たかーいたかーい!お父さんすごーい!!」
高台の公園を尻目に、俺は小さく、眉根を寄せた。
昼間の公園は、好きじゃない。
そこには、俺が持ち得なかった、キラキラとした幸せが、満ちているから。
「お前、捨てられてたんだぜ?しらねーの?コインロッカーベイビーってやつ(笑)」
俺は大学まで、児童養護施設で育ち、中学の時、そこに居た先輩に聞かされた。
あと少し、発見が遅れていたら、俺は0歳にして、死んでいたそうだ。
「……………」
両親の代わりに、温和そうな先生達が、俺の親代わりだった。
本当の父と、母の顔は、分からない。
今になって。
無性に、親の愛を、感じてみたくなる。
肩車って、どんなだろう。
お父さんの背中って、どんなだろう。
お母さんの料理って、どんなだろう。
家族って、どんなだろう。
施設の奴らとは、今もたまに連絡を取る。
けど、やっぱり根本的に、違う部分があって。
自分が同性愛者だという事実が、どうしても、壁を1枚作ってしまうんだ。
施設の中で、付き合ったり、肉体関係を持つことはざらだった。
俺も1回、高校時代。同い年の女に求められたことがあったが。
どうしても、そういう気持ちには、なれなかった。
ただただ。
自分が他人とは違うのだと、思い知らされた。
「……なーんももってねー奴、いねーかな」
もしそんな奴がいれば。
是非、友達になりたい。
同じ痛みを、夜が明けるまで、語り合いたい。
自分のこと。
過去のこと。
未来のこと。
独りじゃないって、どんなだろう。
それがどうしても、知りたい。
「………なーんつって、さ」
自嘲気味に鼻を鳴らして、肩をすくませる。
もう、流石に、諦めてるんだ。
だから、独りで生きていこうって。
独りで生きていくんだって、決めた。
親にも捨てられるような、くだらない命。
一体誰が、必要としてくれるだろう。
――なのに。
ここ数日。
頭の片隅に、メガネの泣き顔が、いつも、ある。
昔の俺を、見ているようで。
こんな俺でも、メガネの力になれるんじゃないかって。
そんな風に考えてる自分が、確かに居る。
ポケットの中には、俺の携帯番号を書いたメモが入ってる。
いざという時。アイツに、誰かの力が必要になった時。
俺なら、助けてやれる気がしたから。
メガネは今、学校だろうか。
また、いじめられてやしないだろうか。
そういえば、俺はメガネの名前も、年齢も、どこの学校なのかも、しらない。
「次会ったら…聞いてみっか」
ふと空を見上げると。
空にぽつんと、白い雲が浮かんでいた。
その形がなんだか、メガネみたいに見えて、可笑しかった。
俺はついさっき仮の歯を入れてもらったところを、舌でグリグリしながら。
「なんか、違和感あんなぁ」
呟いた。
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