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もすけブログ

ゲイイラストを中心に活動するもすけの本拠地。

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イラストupするだけのつもりが……。

押入れを整理していると、一枚の写真が出てきた。

「うっわ……懐かしっ」

写真を覗きこみながら思わずそう呟いたのは、
もう何年も会っていないアイツが俺の隣に写っていたからだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇

今日、俺はこの街を去る。
今居るこの大都会からはずーっと遠くの、俺なんかじゃ到底知りえないような小さな町。
そこでは毎年嫌というほど雪が降るらしく、少しでも雪が降ると
「ねえ!外行こう!外!」
とはしゃぐアイツにとっては恐らく羨ましい環境なのではないだろうか。
しかし飽きっぽい性格のアイツだから、どうせ楽しそうなのは一日だけで。
2、3日もしたら「雪なんて降らなければ良いのにね」
なんて言い出しそうだ。

「…………」

まとめた荷物。
がらんどうの部屋。

俺が引っ越す事を、アイツには言っていない。
言う必要は無いだろうと思ったし、俺が居なくてもあいつは平気だろうと思ったから。

「…………」

思い返せば俺の一目惚れだった。
アイツが新入社員で、俺が先輩で。
大好きな顔に「先輩」と呼ばれる度に俺は笑顔になりそうになるのを堪えていた。
それまで不良キャラが板についていた俺が、アイツにだけニコニコしていたら、
どんなに鈍いノンケの同僚だって、俺が同性愛者なんじゃないかと勘繰るだろう。

「…………」

基本的に厳しく振舞った俺だったけど、屈託なく笑うアイツを前にすると調子が出なかった。
忘年会の席でアイツは俺の隣に座り、ベロンベロンに酔っ払った挙句、俺にキスをした。
その場は大いに盛り上がった。
不良ぶっていた俺が目を丸くして、口をパクパクしているのが、皆面白かったのだろう。
笑いは耐えなかった。
アイツもアイツで「しまったー!俺今の初チューでした!!」とか言うから収拾がつかなくなって。

だけどそれから、俺は以前より皆の前で笑うようになった。
アイツのおかげで、少なくとも俺は会社に通うのが楽しくなったんだ。

「…………」

1人暮らしの俺の家に良く泊まりに来ては寝ずにTVゲームをした。
アイツは「ぷよぷよ」が得意で、俺はアイツに勝てなくて。
「なんどやっても無駄ですよ~」とからかわれる度に、
靴下を脱がして顔面に投げ付けてやった。

アイツはもしかしたらゲイなのではないだろうか。
そんな風に考えると、居てもたってもいられなくなった。
何度も告白を考えた。
だけどその度に、同僚の女社員と居る時のアイツの楽しげな顔が気になった。
俺と居る時よりも饒舌に話すアイツ。
俺の知らない話をするアイツ。
その挙動の一つ一つが、俺の心を締め付けた。
コイツはノンケだ。
そう結論付けて、結局一度だって告白はしなかった。

しかし、年月を重ねるごとに、俺とアイツは目に見えて仲良くなっていった。
「お前等本当にいつも一緒に居るよな」
「もしかして付き合ってんじゃねー?(笑)」
そうやって同僚からからかわれるのが恒例になって
「あーばれた?(笑)」
とアイツが笑うのもまたお約束となっていた。

そんな毎日を俺は心から楽しいと感じていたのだけれど。
……同時に同じくらいに苦しかった。


「…………」

引越しをするに至ったきっかけ。
ちょうど1週間前の今日。
会社に忘れ物をしてしまった俺が急ぎ足で戻ると、
丁度アイツが同僚の松下美千子と抱き合っているところだった。

その瞬間、なんだか全部馬鹿らしくなって。
駄目元で翌日、会社に辞表を提出した。
「急には辞められないよ」
と案の定言われたから、仕方なく会社には通った。

先の事なんて全く考えて居なかった俺だけど。
兎に角一分でも一秒でも早く、アイツの元を離れたかった。

中学時代に引っ越した幼馴染みの連絡先をタンスの奥から発掘して
俺はそいつにしばらく泊めて貰えるように頼み込んだ。

「…………」

そして今日が引越しの日。
辞表を出してから一週間。
引越しの事は同僚にも会社にも家族にも話していない。
勿論アイツにもだ。
辞表は受け取ってもらえなかったが、そんな事は知らない。
どうしようもないやつと蔑まれても構わない。

何も言わずに居なくなる俺を、アイツは何と罵るだろうか。
「悲劇のヒロインぶって」と呆れるだろうか。
「あ、そうですか。さようなら」と興味を示されないだろうか。

「行かないでください。寂しいです」と言って欲しいんだろうと思う、俺は。
心のどこかで、引越す俺を引き止めて欲しいと思っているんだ。

ノンケに恋をした俺が馬鹿だったのだ。
未練は無い。

「ごめん」

誰の耳にも届かない呟きだけを残して、俺は長年過ごしたアパートを後にした。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇

押入れの整理がひとしきり済んでから、さっきの写真をポケットから取り出すと、
丁度玄関のドアが開いて恰幅の良い男が入ってきた。

「ただいまー」

「おかえりんご」

「ん?何すか、それ」

慣れた手つきでネクタイを外しながら、男はひょいと写真を覗きこむ。

「昔携帯で撮った写真をプリントしたやつ」

「へ~……あ、本当だ!若っ!!金髪!!ヤンキーみたい!!」

「おいおい」

「っていうか、この右の人は誰ですか?」

写真の向こうで屈託無く笑うアイツを指差しながら、男は俺に尋ねた。

「元彼」

「えー!?」

「うるさっ」

「マジっすか!?なんかショック……」

「ははは、嘘だよ。俺の片想い」

「それはそれで嫌なんですけど」

「何、妬いてくれてんの?」

目に見えてテンションの下がった男――相方の柔らかい髪の毛をわしゃわしゃと撫でる。

「今はお前が一番だよ」

「……ホントッスか?」

「本当」

「ホントにホント?」

「うっせーな(笑)じゃあコレお前が持ってろよ。若かりし日の俺の写真ってコレだけだから、中々にレアだぜ?」

「え~……びみょー。パツキンだし……」

「おーおー、良い度胸してんなお前。犯してやる」

「俺今日クタクタっスー」

「安心しろ、俺もクタクタだー!!」



あの日アイツの元を去って。
俺は今の生活を手に入れた。
アイツが今どこで何をしてるのか、誰とどんな風に笑ってるのか分からない。
俺は今、コイツと笑っていて、それが良い事なのか、悪い事なのか分からない。

だけど、何となく今日は気分が良い。
多分きっと、それで良いんだろう。

居酒屋にてb


……って長ぇよ…orz
何がなんだかさっぱりだよ。
良い子の皆は急に会社辞めちゃだめなんだぜwwww

しかし、ひさしぶりに男描いたぜー!!
うほうほ♪

| イラスト | 08:19 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

おつかれりんこ

読んじゃったよ、一心不乱に。
長いけど飽きなかったよw

| u4gvn3 | 2010/04/28 19:12 | URL |

No title

やたらと壁のメニューがスマイルをおすすめしている件について

| ごもく | 2010/04/28 20:47 | URL |

「俺」的には…

僕が「俺」だったら、一緒に撮った写真なんて引越のときに
爽やかに破って捨てると思われます。
…それが良い事なのか、悪い事なのか分からないけど^^

| 恵輔 | 2010/04/28 23:06 | URL | ≫ EDIT

うまい!

俺も一気に読んだよ。こういう切ないストーリー、俺は結構好きです。

| 龍児 | 2010/04/28 23:49 | URL |

No title

ほっこりするストーリーをありがとう!なんか、仕事でどっと疲れてたのが吹っ飛んでくれました。

俺もこういう男らしい奴になりたいなぁ。まったく同じような設定で同じような場面に出くわしたのに、まだあきらめきれずに会社を辞められない自分・・・。はぁ、情けないな~。

っつーか、この二の腕の太さが大好き(笑

| らっしー | 2010/04/29 00:49 | URL |

RE:u4さん、ごもくさん

>>u4さん

おつかれりんこだぷーwww

読んでくれただけで感謝感謝ですよ♪

>>ごもくさん

目の付け所がシャープ過ぎる件についてww

店員さんのスマイルは勿論、お客様を笑顔にする事を¥0で提供しているスーパー居酒屋なのです!!

……という事にします(笑)

| もすけ | 2010/04/29 04:24 | URL |

RE:恵輔さん、龍児さん

>>恵輔さん

うわー!また絶妙な感じで「それが良い事なのか――」を使いこなしましたね(笑)!!

っていうか、破り捨てないで下さいーwww

>>龍児さん

読んでくださったんですねー!
どうもありがとうございます♪

俺も、しんみりしちゃうお話大好きです。

胸がキュっとなるようなお話を見たり聞いたりしたいのですが、中々見つかりません…!!

| もすけ | 2010/04/29 04:30 | URL |

RE:らっしーさん

>>らっしーさん

わーい♪
すげー良かったです!
(・`ω´・)

いやいや!
相当女々しいやつですよ、この「俺」ってのは(笑)
らっしーさんの方が会社にいる分全然マシだと思います!!

っていうか、同じような境遇にあったんすね……。うぅ。想像しただけでシンミリ来ちゃいますぜ!

太い腕良いですよね~♪
これから夏になっていくので、冬場は中々できなかった目の保養が沢山できそうです(笑)

| もすけ | 2010/04/29 04:35 | URL |















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