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もすけブログ

ゲイイラストを中心に活動するもすけの本拠地。

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第四話

「話って何だよ。なんかとんでもないことやらかしたか?」

「いや…やらかしてはいないけど」

「じゃあなんよ?」

「………うん」

「はよ言えよ(笑)」

「お……俺な。俺……お前のこと…好き。…かも」

「おいおい流石に俺もバカじゃないぞ。もう今日だけで8人に騙されてっかんね?エイプリルフールだろ?」

「………………」

「……お、おい。だまんなって。俺騙されんよ?」

「………………」

「……え、マジでホモってこと?」

「………うん」

「あー……マジか。…すまん、無理だわ」

「………………だよね。ごめ――」

そこで、目が覚める。
またあの時の夢だ。

高校時代、好きだった相手に告白をした。
今にして思えば、なんでそんなこと…って思う。
でも、味わってみたかったんだ。
誰かと同じ気持を共有するってこと。
想うこと。
想われること。
手を繋いだり、唇を重ねたり、抱き合ったり。
独りじゃないって、どういう気持か、知りたかった。

「………気持ち悪い」

猛烈な吐き気に俺は、トイレまで保たないことを自覚し、近くのゴミ箱に嘔吐した。
あの夢を見た時は、いつもこうなる。

高校時代の告白以来。
そいつは目に見えて俺から距離を置くようになった。
今までは何気なくしてくれたスキンシップも、一切なくなったし。
メールも、電話も、向こうから来ることは一度もなかった。
極めつけは…陰口。

自分がもう、そいつの友人ではないことを理解した瞬間。
世界は、真っ暗になった。

吐瀉物の臭いが不快で、俺は早急にゴミ袋の処理をして、うがいをする。

「……ワンピース。今日発売日か」

カレンダーを眺めながら俺はひとりごちた。

ズボンのポケットにはまだ、自分の携帯番号を書いたメモが入っている。
今日、それをメガネに渡そう。

モヤモヤと燻ぶる胸の内を、なんとか誤魔化しながら俺はバイトの準備を始めた。





結局。
メガネは来なかった。

来ない理由を考えたところ、もしかしたらまた、クラスメイトにいじめられているんじゃないかと。
俺は町中走り回った。
けど、よくよく考えたら、アイツがどこの学校の、なんて名前のやつかもわからない。
一番に思いついた高台の公園にも、居なかった。
河川敷にも、校舎裏にも。

小さい時分から、長距離走は苦手だった。
堪え性がない性格で、我慢することが嫌いだった。
あんなに息苦しい状態でずっと走り続けるなんて、正気の沙汰じゃない。
そう思ってた。
今も、そう思う。

けど、なんでかな。
アイツがどっかで泣いてるんじゃないかって思ったら。
自分が苦しいことなんて、どうだってよく思えたんだ。

「もっかい…いってみるか」

息も整わないまま、俺は高台の公園へ走った。





滑り台と砂場と小さなベンチしか無い小さな公園に、数人の子供達が居た。
その中に、メガネを見つける。
やっぱりアイツ、また。

声をかけようとした、その時。

「俺の弟に、何やってんだぁぁあぁああああああああ!!」

叫び声とともに、なにかが俺の横を駆け抜けていった。
オレンジの服を着た声の主が、メガネの胸ぐらを掴んでる少年に殴りかかると、一気に乱戦になった。

「………………」

俺はただ、その様子を眺めていた。

「風介今だ!逃げろ!!」
オレンジが叫ぶ。
このオレンジがきっと、メガネにお守りを渡した兄貴だろう。

っていうか、メガネ…風介って名前だったのか。

オレンジは3人に囲まれて、袋叩きにあっていた。
自分に注意を引きつけて、メガネを逃がそうというハラなのだろう。

しかし、メガネは逃げるどころか、オレンジを囲んでいる一人を押し倒した。
オレンジはメガネを、メガネはオレンジを。
本当に、大事に思ってるんだろう。

「………………」

なんだ。
アイツ、ちゃんと…助けてくれる奴いるじゃん。
良かった…。

俺は、ポケットの奥で、メモ用紙の切れ端を握りしめた。

今俺が、良かった、って思ったこと。
それは…たぶん。
本心であり、本心じゃあない。

自分の居場所。
それが、そこにはないような気がして、俺は、子供達の騒ぎ声を聞きながら、帰路についた。



帰り道の繁華街。
町はキラキラと、輝いてる。
久しぶりに走ったせいか、膝の裏に痛みを感じることに気付く。

腕を組み歩く男女の後ろ姿も。
買い物袋をぶら下げた親子の姿も。
すれ違う人達の顔を、俺は見ないように歩いた。

空を見上げても。
月も、星も、出ておらず。

……なんでだろう。
歯の隙間を埋めている、仮の歯を舌でいじりながら。
涙が、流れて止まらない理由を、探していた。
胸の奥が、喉の奥が、体中が。
痛くて、痛くて、たまらない。

俺はあんな子供に、自分の居場所を、求めたんだ。
でも、その子供にすら、自分の居場所があった。
なんて。
なんて……惨めな命だろうか。
結局、やっぱり…俺はこの世に――

――刹那

「きゃぁあああああああああ!!」

聞こえたのは誰かの悲鳴と、衝突音。

(ああ。これはきっと、バチってやつだ……)

視界が大きく揺れると同時に知覚する。
自分のことしか考えられない俺に、神様がバチを与えたんだ。

でも…やっとこれで――

そこで、俺の意識は、霧散した。

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